『Messenger』57号記事公開!櫻井英代・原発不明がん余命3か月から6年『あなたの力を信じている』
2021.02.02
日記『Messenger』57号記事公開!
『Messenger』は命と向き合っている方、がん経験された方、医師などの医療関係者を取材し、その想いを載せています。
2005年1月創刊、1冊400円、現在の発行部数4100部。
私自身、入院中にいちばん勇気と希望をもらえたのが生の体験談でした。暗いニュースの多い中、命と向き合い輝いている方々を取材して、生の声を届け、少しでも世の中に希望を増やしたい。ご縁繋ぎを生きがいとして生きていた中で、雑誌という媒体を使い、生きる希望を失いかけている人に光を灯したい。そんな想いがあふれて生まれたマガジンです。
「命はそんなにやわじゃない。命は輝きたがっている。自分で生きるスイッチを入れてほしい」
杉浦貴之発刊『Messenger』57号に寄稿された櫻井英代さんの記事を公開します。52号以来、2度目の寄稿です。
あなたの力を信じている 櫻井英代
私は2013年に原発不明がんと宣告され、2度の再発。そして、2015年4月には「年内は持たない。早くて3か月」と余命宣告を受けました。
でも今は、がんになる前より健康で元気です。血液検査は一つもチェックがありません。薬は何も飲んでいません。6年間、私の体の中にあった抗がん剤用のCVポートも、2020年2月20日に卒業しました。
■ 最初の余命宣告
早ければ3か月と宣告されてから、この4月で5年。実は私、余命宣告されたのは、これが初めてではなかったのです。
私は母のお腹の中にいるとき、育ちが悪く、母体のためにも堕したほうがいいと何度も主治医に言われたそうです。でも「親として我が子を死なせるわけにはいかない」と、周りの反対を押し切って母は私を産みました。
いつまで生きられるかわからないと、父は産まれる前から私に名前を付けました。男女どちらでもいいように(昔は出産前の診断はなかったので)、父の一字を取って「英代」と名付け、産まれたその日に出生届を出しました。仮死状態で産まれ、「おそらく1か月持つか?」と言われていましたが、母は毎日のように病院に通い、2か月を過ぎてようやく落ち着いたそうです。
その後も予防接種を受ければ1か月の高熱、小児喘息もあり、小学生になることは無理かもしれないと言われたそうです。
食欲が旺盛だった私は体力をつけて元気になっていくのですが、来年は小学生!というときに今度は「白血病の疑い」が出て、帯広から札幌の大学病院に検査に通いました。
結果、疑いは晴れ、めでたく1年生に!
そんな大切な命。生かされた命。なのに、その後の私は自分の命を粗末にしてきました。
1年生の夏休み、父は交通事故に遭い、それから3年間入院生活を送りました。私も病院に寝泊まりし、病院から一人でバスに乗って学校に通いました。
私は4つ下の弟の面倒を見る良いお姉さんになりました。姉だから我慢するのは当然。母のために、父のために、人のために自分を犠牲にすることは当たり前のように育ちました。
大人になって仕事についても、結婚して子どもを産んでも、自分を犠牲にして生きることが美しいと思って生きてきたんです。
そんな私に「がん」という体からのメッセージ。初めはそれを受け取れず、仕事に明け暮れ、家族のために睡眠時間も削っていました。しかし、再発をし、余命宣告を受けたとき、初めて自分を犠牲にしてきたことに気づき後悔したのです。「死」を覚悟したこのときが私の変わるきっかけとなりました。
■ 仲間がいたから
今私は元気になり、がん体験をいろいろな場面でお話しする機会を頂いています。ありがたいことです。私の体験を聞いて「元気をもらった」「希望が持てた!」そう思ってもらえると、これが生かされた意味なんだなぁと感じます。
そして、どこに行っても聞かれることが「どうして治ったと思いますか?」「何が効いたと思いますか?」。きっと今治療中の方にとっては一番知りたいことだと思います。
抗がん剤もやりました。代替療法もお手当もやりました。どれも治るための助けにはなったと思います。しかし本当は、「生きたい」というスイッチを入れることができたこと、自分の生き方、自分自身との向き合い方を変えることができたこと、自分で自分を大事にするようになったことが大きかったと思います。
余命宣告されたとき、主治医は「抗がん剤ももうできない」と言ったけれど、「絶対にやってほしい」と押し切りました。体力が回復して「それなら6クール」と提示されたとき、私は自分の意志で、3クールで止めました。どれも自分の体と話し合って決めたのです。
皆さんには「自分で決めるなんて強いね」とか「私にはそれができない」とよく言われます。
でもがんになる前の私はとにかく決められない、カフェに行っても、プレゼント選びでもさんざん悩んで決めて、それでも後悔する人でした。そんな私がいろいろな治療を決めることができたのは、親から、家族から、そして仲間からの愛を素直に受け取り、頑張らないで自分に優しくなれたからです。「生きたい!」という思いと、それを支えてくれた仲間との出会いがあったからだと思っています。
笑いヨガの仲間、チームメッセンジャーの仲間は、どんなときも寄り添ってくれて、「大丈夫」と言ってくれました。「治るよ!」の大丈夫ではなく、「あなたの力を信じているよ」という大丈夫だったと思います。
5年前、「最後にみんなと笑いたい!」と車椅子で笑いヨガのイベントに行ったときのことを、一緒に笑ってくれた仲間がこう話してくれました。
「今だから言えるけど、あのとき、これがひでねぇと笑うのは最後かもしれないと覚悟した。でも元気になると信じたかった」
心の中は複雑でも、みんな笑って「大丈夫」と言ってくれたのです。私は「一人じゃない」と感じることができました。自分で自分のことを褒める人の中にいると、自分が大好きになっていきました。いろいろなことを決めるとき、それが私のエネルギーになったのです。
■ 一人じゃない
余命宣告から2年目の春(2017年4月)にリンパ節転移の疑いと診断されました。確かに触ると右鼠径部にコリコリとしたものが当たりました。
「どうして今なの?」「どうしてまたこうなるの?」
がっかりしました。怒りもこみ上げてきました。でも、このときは自分の感情に正直に、怒りも悲しみもすべて叫んで吐き出しました。
笑いヨガには「マイナスを笑ってプラスに変える」というスピリットがありますが、もう一つ大切なものがあります。
「笑えないときは無理に笑わなくていい。マイナスの感情を笑って誤魔化す必要はない。怒って、悲しい気持ちでいる自分の味方でいてあげる。その上で 少し笑ってみる。そうしたら気持ちが少し軽くなるかもしれない。怒り、悲しみの感情を味わっていい。大切なのはその感情にいつまでも浸っていないこと」
だから自分の感情を吐き出しました。
「どうして? なんで!」と叫んだ後は、うそでも「スッキリした」と言ってみました。毎日毎日それを繰り返すうちに、また体のことを棚に上げて走り回っている馬車馬の自分に気づきました。
「そうか、この気づきが今の私に必要だったんだ!」
リンパ節転移の治療のため、主治医からは抗がん剤治療を勧められましたが、もう一度自分との会話をやり直そうと思い断りました。
それから1年が経過し、リンパ節の縮小が見られました。
「そうか、やっぱりがんは私にメッセージをくれているのね」
がんがまた、愛おしくなりました。
リンパ節の縮小が見られ、今のタイミングでは抗がん剤の必要がないと言われたとき、私は抗がん剤治療用に埋め込まれているCVポートを取ってほしいと主治医に申し出ました。
でも主治医は「必ず再発する!」と言います。私が「笑っているから大丈夫!」と返すと「それはない!」とキッパリ。私は主治医がそう言うと思っていたので大笑い。看護師さんに「櫻井さんはいつも楽しそう」と言われ診察が終わりました。
このやり取りは、2年間、3か月ごとの検診のたびに繰り返されました。
「大丈夫! 私には仲間がいるから!」
そう思えたから、めげなかったんだと思います。
今私は「smile cancer supporters笑愛(わあいあい)」というグループを立ち上げ、「笑いヨガ」を一つのツールとして、仲間たちと治療中の方のサポートをさせてもらっています。
がんを経験した仲間だからこそ話せることがあります。一緒に泣いて、一緒に笑って、みんなが喜びを感じながらやってくれています。私は「一人じゃない」を伝えたいと思っています。
私のがん体験を聞いて集まってくれた仲間たち。いつの間にか、それぞれの思いがポジティブになって、皆「私が自分でこの出会いを引き寄せた!」と自分で自分を褒めています(笑)。おかしな楽しい仲間たちです。
これから、北海道にどんどん希望の笑顔が広がりそうです。皆でワクワクしながら楽しんで活動していきたいと思います。
「笑愛(わあいあい)」
⇒https://waraiai-smilecancer.amebaownd.com/
櫻井英代さんが講師を務める、オンライン・スペシャルビンビン養生セミナー4回講座《笑いの養生編》
2月4日は櫻井英代さんが登場されます!予定が合わなくても録画での視聴もできます!
【第1回】 櫻井英代(笑いヨガインストラクター・がん経験者)
2021年 2月4日(木) 19時~21時 セミナー70分 質疑応答・交流会 50分
「心と体に新しい痛みを作らない笑い方」
笑いヨガは、笑う健康体操とヨガの呼吸法を組み合わせたもの、作り笑いでも本物の笑いでも健康効果は同じという科学的根拠に基づいています。健康にいいから笑う。でも無理やり笑ってごまかしていませんか?本当は辛いんじゃないですか?笑いヨガの効果と共に、自分の感情と向き合うコツをお伝えします。
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『Messenger』は命と向き合っている方、がん経験された方、医師などの医療関係者を取材し、その想いを載せています。
「命はそんなにやわじゃない。命は輝きたがっている。自分で生きるスイッチを入れてほしい」